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ヨーロッパ腎臓医学学界の年中行事

6月 12, 2016

ヨーロッパに於ける最大規模の欧州腎臓学会・欧州透析移植学会(第53回ERA-EDTA)が本(2016)年5月にウィーンで開催されました。参加者は主にヨーロッパ諸国に於ける腎臓医学関連の方々で、約8000人にも及んでいます。そこで最新の医学技術や知識・情報等の交流が行われています。

バスキュラーアクセス(VA)は透析患者の命綱と言われています。VAに関しては、自己動静脈を使用する内シャント(AVF)の作製が第1選択肢となりますが、新しく作られたAVFの発育不良率は30%から50%にも達すると言われているにもかかわらず、採用できる有効な処置が限られています。従い、AVF発育不良に対し、現在では主に発生した後の改善方法が焦点となり、予防策に関してはまだ研究されている段階です。

今回の学会に於いて、AVF発育不良を改善する研究や新しい療法をめぐるテーマとしてJan H. M. Tordoir先生が講演をなさいました。Jan H. M. Tordoir博士はMaastricht UMC+病院の血管外科医で、VAに専念し、VAに関する論文が112部も発表し、ヨーロッパVAのガイドライン作成にも参加になさった方です。

講演中、Jan H. M. TordoirはAVFの発育不良を改善する新しい療法を紹介しました。それら療法の特長としては、主にAVF作製の前後に、薬と非薬物を通じて血管の質・機能を向上させる方法です。例え、エラスターゼ(酵素)を利用して血管拡張を促進する療法、動脈―静脈吻合部の閉塞を予防するインプラント療法、血管成長因子を含むゲルの使用、やフィラピー照射療法などが挙げられます。

ところで、その中に最も注目すべきなのは、体外照射することによって血管機能を改善させ、AVFの育成、寿命を延長できるフィラピー療法です。他の療法はほぼ実験段階でまだ普及されていないのに対し、フィラピー療法は既に15年以上も臨床応用されてきた製品で、現在各国の透析施設に一般的に使われています。

AVFの育成に対し、フィラピーの効果は、慢性腎臓病第4期或いは第5期患者の血液中にADMAの量を減らし、NOの産出を回復することによって、静脈の伸展及びOutward remodeling能力を向上させます。AVFが順調に発達できます。

また、フィラピーで照射すると、ヘムオキシゲナーゼ1 (HO-1)の活性化を促進することができます。炎症を和らげたり、血管内膜の厚さを減らしたり、酸化ストレスを解消して内皮細胞の機能を改善したりすることができます。よってAVF閉塞の予防につながります。

フィラピーは身体に侵入しない、副作用や禁忌が少ないくて操作しやすい装置で、消耗品や使用場所の制限も少ないといった特徴があります。そして、AVFの合併症による不快感も軽減できます。他の侵入療法と比べ、フィラピーはより簡単に臨床応用できると思われます。

日本に於いては、一部の病院が正式にフィラピーを導入し、シャントとフットケアに応用されています。フィラピーが日本ですぐに広がって、透析患者の健康にきっと役立つと信じます。
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